研究代表者大城房美は、1996年にニューヨーク州立大学ストーニーブルック校で、視覚的表現における「女性」の主体性構築の題材として「少女マンガ」に関する研究を始め、2001年度に博士論文を提出した。少女マンガは1970年代に殆どの作家/読者が「女性」となり、それ以降、女性の多様な主体性表現を展開してゆく。それは第二波フェミニズムの流れの中でエレーヌ・シクスーらが名付けた「エクリチュール・フェミニン」、つまり既存の「男性」を主体としない表現を体現していた。詳細な調査で大城は、アメリカにおいても、1970年代に女性たちによるコミックスが「女性の空間」としての転機を迎えていたことを知る。それ以降大城は、「コミックス」という表現形式と「女性」の自己表現と主体性というテーマは、異文化間で共有されている文化として研究すべき課題であるとの認識を強くしてきた。
近年海外では、コミックスの男性中心の傾向がMANGAの受容とともに変化し、女性読者/作家の数が増加傾向にある。MANGAのグローバル化とともに、これまでのコミックスにはなかった流れが生じている。もしこの傾向が、国境や文化を越えた「女性」表現をMANGAが触発した結果であるならば、異文化間に連動する「女性」主体性表現に関わる興味深い研究対象として取り上げるべきであると思い至った。