― 二重に周縁化された分野としての「女性コミックス研究」 ―
コミックスは、メッセージを視覚的に伝える分かりやすい手段として多くの文化が共有しているが、なかなかアカデミックな研究対象とならなかった。テンプル大学教授John A. Lentによる初のコミックスの学術誌 International Journal of Comic Art の創刊は1999年、「日本マンガ学会」の設立は2001年である。1990年代に「マンガ」が日本発生で独自のスタイルと文法を持ったメディアとして海外で認知され始め、21世紀になってようやくその研究の歴史が始まったといえよう。
さらに「女性」というキーワードから、コミックス・マンガ文化を考察すると、その偏向はより明らかとなる。殆どの文化圏の人々にとって、コミックスは少年/男性文化を意味し、「女性はコミックスを読まない」という神話も存在する。「女性」コミックス文化は学術的文化研究とコミックスの分野から二重に排除されてきた分野といえるのである。